
夏の建設現場で、施工管理が必ず考えなければならないのが熱中症対策です。
「水分を取るように声をかければいい」
「空調服を着ているから大丈夫」
そんな対策だけでは十分とはいえません。
現場監督には、作業開始前に暑さの状況を把握し、作業内容や休憩方法を考え、体調不良者が出た場合にすぐ対応できる体制を整えておくことが求められます。
特に2025年6月から、一定の暑熱環境下で行われる作業について熱中症対策が強化されました。
対象となるのは、原則としてWBGT28℃以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業です。
こうした作業では、
「報告体制の整備」 「重篤化を防ぐための手順作成」 「関係作業者への周知」
が事業者に義務付けられています。
この記事では、新人施工管理の方に向けて、猛暑日の朝、現場監督が何を確認して現場を回せばいいのかを7つのポイントで解説します。
1.朝一番に「気温」ではなくWBGTを確認する
まず確認したいのがWBGT(暑さ指数)です。
WBGTは気温だけでなく、湿度や日射・輻射熱などを考慮して熱中症の危険度を判断するための指標です。
例えば同じ気温32℃でも、
- 湿度が高い
- 直射日光を受ける
- 風が弱い
- 地面からの照り返しが強い
といった現場では、身体への負担が大きくなる可能性があります。
そのため、
「今日は33℃だから昨日と同じ」
ではなく、WBGTを確認して当日の作業を考えます。
厚生労働省の2026年ガイドラインでも、WBGT値を把握し、その値に応じた熱中症予防対策を実施することが重要とされています。
朝礼時だけでなく、作業中も暑さの変化を確認することがポイントです。
2.暑くなる時間帯と作業内容を照らし合わせる
次に確認したいのが、その日の工程です。
例えば、
- 重量物を人力で扱う
- 屋外で長時間作業する
- 日陰がない場所で作業する
- 保護具や厚い作業着を着用する
- 風通しの悪い場所で作業する
といった作業が、暑さの厳しい時間帯に集中していないでしょうか。
可能であれば、身体への負担が大きい作業を比較的涼しい時間帯へ移すなど、作業時間そのものを調整することも熱中症対策です。
国交省も建設工事の猛暑対策として、施工時期・時間・方法の工夫や新技術の活用などを進めています。
施工管理として、
「予定どおり作業するにはどうするか」
だけではなく、
「今日の暑さで、この工程をそのまま行って大丈夫か」
という視点を持っておきましょう。
3.休憩を「各自の判断」に任せない

現場でありがちなのが、
「暑かったら適当に休憩してください」
という指示です。
しかし作業員によって、
「もう少しで終わるから」
「周りが働いているから休みにくい」
と無理をしてしまう可能性があります。
猛暑日は、必要に応じて休憩のタイミングをあらかじめ決めておく方が管理しやすくなります。
そして休憩場所も重要です。
厚労省は高温多湿な作業場所の近くに、
- 冷房設備のある休憩場所
- 日陰などの涼しい場所
- 身体を冷やせる物品・設備
- 水分・塩分を補給できる環境
などを整えることを示しています。
「休ませる」だけでなく「身体を冷やせる場所で休ませる」まで考えることがポイントです。
4.水分・塩分補給を「本人任せ」にしない
熱中症対策といえば水分・塩分補給ですが、
「ちゃんと飲んでください」だけでは確認になりません。
作業に集中していると、本人が思っている以上に長時間飲んでいないことがあります。
厚労省も、高温多湿作業場所での作業中には巡視を頻繁に行い、定期的な水分・塩分摂取の確認や健康状態の確認を行うことを示しています。
施工管理として巡回するときは、
「大丈夫ですか?」
だけでなく、
「水分取っていますか?」 「最後に休憩したのはいつですか?」
と具体的に確認すると状態を把握しやすくなります。
5.朝礼で作業員の体調を見る
同じ暑さでも、全員が同じように影響を受けるわけではありません。
例えば、
- 睡眠不足
- 前日の疲労
- 食事が十分取れていない
- 暑さにまだ慣れていない
- 体調が普段と違う
といった状態では注意が必要です。
新人監督の場合、
「本人が大丈夫と言っているから大丈夫」
で終わらせてしまいがちですが、朝礼時の顔色や受け答えなども見ておきましょう。
また厚労省は、作業中の巡視や、2人以上で互いの健康状態を確認するバディ制なども報告体制の例として挙げています。
一人作業に近い状態になっていないかも確認したいポイントです。
6.「誰に報告するか」を作業開始前に決める

2025年6月からの熱中症対策強化で、特に新人施工管理が覚えておきたいポイントです。
熱中症のおそれがある作業では、
「本人が熱中症の症状を感じた場合」
だけでなく、
「周囲の人が熱中症のおそれがある作業員を発見した場合」
にも報告できる体制を、あらかじめ決めて周知する必要があります。
例えば朝礼で、
「体調がおかしい場合や、周りの人の様子がおかしいと感じた場合は、職長または○○まで連絡してください」
と具体的に伝えておく。
これだけでも、
「誰に言えばいいか分からない」
という状態を防げます。
連絡先や担当者を掲示しておく方法も分かりやすいでしょう。
7.熱中症が疑われたときの手順を決めておく
最後が最も重要です。
作業員に熱中症が疑われる症状が出てから、
「さて、どうしよう?」
と考え始めるのでは遅れます。
厚労省が示す対策では、あらかじめ、
作業から離脱させる ↓ 身体を冷却する ↓ 必要に応じて医師の診察・処置を受けさせる ↓ 緊急時には医療機関へ搬送する
といった対応手順や、緊急連絡網・搬送先の連絡先などを定め、関係者へ周知することが求められています。
特に注意したいのが、
「少し休めば大丈夫だろう」
と現場だけで判断してしまうこと。
意識がおかしい、受け答えがおかしい、自力で水分を摂れないなど、重症が疑われる場合には迅速な対応が必要です。
また、本人を一人にしてはいけません。
「休憩所で休んでいて」と一人にするのではなく、状態を確認できる人をつけておくことが大切です。
新人施工管理向け|猛暑日の朝チェックリスト
朝礼前に、最低限この7項目を確認してみましょう。
□ WBGTを確認したか
気温だけで判断していないか。
□ 暑い時間帯と作業内容を確認したか
負荷の大きい作業が集中していないか。
□ 休憩方法を決めたか
涼しい休憩場所も確保できているか。
□ 水分・塩分を補給できるか
作業員任せになっていないか。
□ 作業員の体調を確認したか
朝礼時の顔色や受け答えも見る。
□ 報告先を周知したか
本人・周囲の人が異変を伝えられるか。
□ 緊急時の対応を確認したか
冷却方法、連絡先、搬送先などが決まっているか。
この7項目を朝確認するだけでも、単なる「熱中症に注意してください」という朝礼から、具体的な安全管理へ変えられます。
まとめ|熱中症対策も「施工計画」の一部
猛暑日の現場管理で大切なのは、作業員個人の我慢や注意力だけに頼らないことです。
施工管理側で、
暑さを把握する → 作業時間を考える → 休憩・水分補給の環境を作る → 作業員の状態を見る → 異変を報告できる体制を作る → 緊急時の対応を決めておく
ところまで準備します。
2026年現在、熱中症対策は単なる「夏の注意事項」ではありません。
一定の暑熱作業では、報告体制・対応手順・周知が法令上求められており、国交省も建設工事における猛暑対策を進めています。
新人施工管理の方は、
「今日も暑いから気をつけよう」
だけで終わらせず、
「今日の暑さなら、現場をどう回すか?」
まで考えてみてください。
熱中症対策も、工程・品質・安全と同じ現場管理の仕事の一つです。



